占星術のホロスコープ・チャートは「12星座」「10惑星」「アスペクト」「12ハウス」という四つの要素で構成されています。
「12星座」を1星座ずつ、詳しく掘り下げていくシリーズ、今回ご紹介するのは「蠍座」
エレメント:水
クオリティ:固定
守護惑星:火星・冥王星
キーワード:I desire
蠍座のテーマは「何度も生まれ変わること」
蠍座は人生のなかで、何度も変容を体験する星座です。それはエゴの死とも呼べるかもしれませんが、古い自分自身が死に、まったく違う価値観の自分へ生まれ変わる行為です。7番目のサインである天秤座で、わたしたちは特定の他者との関係に入っていきますが、そこで関わり合った結果として何が起きたのかということを象徴するのが蠍座。特定の相手と深いところで結びつき、そして化学反応のように自分の内側にあるものが変わっていくのでしょう。
向かいにある牡牛座においては個人の身体感覚が強化されて、自身との結びつきが深くなりました。ここでは他者との関係が強化されることで、元々の自我に変容が起こります。深いところから他者と結びつくことで、自分の内側に相手の意志や感情や感覚が入り込み、また自分の持っているものも相手へと流れ込んでいきます。そのような一体化を通して、ふたりの人間の境界が解体されて、お互いの持っているものが、お互いにすこしずつ入り込みます。これは現実のなかで精神が変容する神秘といえるでしょう。
そもそも蠍座というサインは、何事も深く追求していく質があり、どんなことでも表面的に終わらせることはありません。あらゆるものの極致と深みを認識するまで、ひとつのテーマを深く掘り下げていくでしょう。そして、その特性と深みに触れることで、それが何者であるのかを明らかにしようと試みます。すべてのものが含んでいる「変化し続ける」というサイクルのなかに、死と再生の輪廻を見出し、その循環のなかに生の営みがあることを理解するでしょう。終わっていくこと、そしてまた始まることを受け容れて、そのサイクルをうながすことを助けていきます。
深く激しい感情が心のなかにあって、それを抑えることが難しいでしょう。どんなことに対しても、表面的な薄っぺらいことには惹かれず、核心をつくような鋭さを求めます。人の本心や本音にもグイグイと近づいていくため、時に激しさに触れて、自身が大きく打たれるかのように揺さぶれることもあるでしょう。しかし、そこに嫌気がさしたとしても、止めることはできません。
神秘的なものや、謎やミステリーを愛し、あらゆるテーマの影に潜んでいるもの、隠れているもの、人間の本質や真理を徹底的に掘り下げようとするでしょう。その内側から何が現れようとも、解明することをやめられません。医学や科学、捜査や研究、心理療法など、まだ実態が知られていないものを明らかにする分野に適性があります。集中力と洞察力を武器に、深く掘り進めながら、知ることによってまた、自身の本質にも迫っていくことになりそうです。
蠍座はセクシャリティの象徴でもありますが、それも変容と関係しています。快楽という意味での象徴は牡牛座の領域であり、ここでは個人の超越を示すでしょう。オーガズムは「エゴの死」であり、その瞬間「自我」が手放されて、相手と深く一体化し「ここではない、どこか」に到達します。これは日常のなかで起こる自己超越(トランス・パーソナル)の体験。深い意識レベルにパートナーと共に触れることで、エゴの死と満足の両方を同時に得ることになるのです。天秤座では踏み込むことのなかった深い領域に達することで、ある種の共有意識が芽生えるでしょう。
蠍座にとって「誰と共に生きるのか」はとても大切な主題です。パートナーとなる相手は、どんなに魅力があっても、共に一体化できるような深みを伴わなければ、愛情を感じません。真実を分かち合えない人に対しては、自然と気持ちが離れて、愛が憎しみに転じることもあるでしょう。
蠍座は水のサインのなかで唯一ケンカをする星座。副支配星である火星の影響で、自分と相手の思惑が異なる時、激しく自己主張し合うことで、お互いの心の深いところまで干渉することになり、結果としてお互いがそれを受け容れることになります。そうすることで、お互いがこれまで持っていたものの形が同時に変わることになるでしょう。これは個人が日常的に体験できる、もうひとつの変容の方法ともいえます。蠍座は水のサインでもあるため、他者から否定されると容易に傷つきます。そこを果敢に主張することで、相手の深みに触れ、互いのエゴを干渉し合うのでしょう。
しかし、そういった蠍座の激しさは、表面的に見ることはできず、外見からはむしろ静かで何かを秘めているように感じられそうです。他者との関係において、相手を深く理解していきますが、その大半は感情を通してつかむため、うまく言葉にならないということもあるでしょう。またそれは思考を超えた深い感情でもあるので他者にうまく伝わらず、誤解されることもあり得ます。傷つきやすい水の星座ですから、もし共感されないのであれば、あえて沈黙を貫くこともするでしょう。秘密主義という蠍座の一面は、そのようなところから生じます。
明るい表面的な出来事よりも、心に生じる深みを感じやすいため、ある種の暗さや深さ、闇がそこにはあるかもしれません。わたしたちのエゴが抱える闇と、本質が持っている光の両極とを、深いところで感じるのも蠍座の性質といえるでしょう。
他者の深みを見抜く力が、時にエゴによる強力なコントロールを引き起こします。相手の内側深くに入り込んで、干渉し、ある種の強制性をもって動かすことがあるでしょう。逆に他者からの干渉を受け容れて、深みにおいてひとつとなり、相手の意のままに染まること、相手の価値観にすり替わるということも起こります。特に大きな変容の過程にあって、過去に築いてきたアイデンティティが破壊されるとき、人格のバランスを保つために、他者に依存することがあるでしょう。
他者をコントロールしたり、依存したりする関係から脱するためには、エゴから離れて、自身の本質から自立することが必要です。自分の思いこみや偏見が破壊されるたびに、わたしたちはすこしずつ、自分の本質へと近づくことができるのでしょう。
そしてこの人格の変容を繰り返して、地を這う蠍が鷲へと昇華することこそが、蠍座の人生のテーマです。そのために、他者を通して、自身のエゴと向き合い、時に苦みを味わうことも繰り返されるのかもしれません。
蠍座は12星座の8番目の星座であり、他者との深い関わりを通して、自分自身の変容を目指していくサインです。
そのため、次のような成長段階を経て、成熟していきます。
最終的に蠍座は、大勢の他者と関わり、影響を与えたり受けたりしながらも、そこに縛られない人格を獲得していきます。他者との関係を通して、内なる統合をめざすことになるでしょう。
蠍座が秘めている才能には、次のようなものがあります。
これらの能力を使いこなすことで、みずからを成長させられるでしょう。
蠍座がポジティブ/ネガティブとなる事由には、次のようなものがあります。
蠍座の仕事といえば、支配星である冥王星の才能を存分に活かせるものが向いているでしょう。冥王星はある意味、徹底的なまでに強迫的にひとつの物事を突き詰めていく性質があります。それは極限に行き着いて、真実をつかむまで、止まることはありません。長く時間がかかっても、決してあきらめずに続けていく持久力と耐久力を兼ね備えているのです。
それゆえ何かを研究したり、ひとつの分野を突き詰めたり、何か難しいことをやり遂げたりすることに適性があるでしょう。簡単な単調作業のくり返しや、深みのない誰でもできるようなあっさりとした仕事では才能を活かすことができません。
難しい課題に対して果敢に立ち向かってこそ、本来の能力が活かされていくでしょう。ですから何らかの専門分野において技術と知識を身につけて、じっくりと極めていくと、仕事を通して人生が充実するかもしれません。深く鋭い洞察力があるため、まだ明らかにされていないことを解明することも、とても向いています。
また冥王星は変容の象徴でもあるので、終わってしまいそうなもの、使えなくなったもの、古びてしまったものを再生させたり、別の形へ変えたりすることもできます。その対象が人間の場合は、人の変容や転機に立ち会って、その人の生き方を変えたり、別の方向へと導いたりすることもあるでしょう。
あまりやることをコロコロと変えていくよりも、ひとつのことをじっくりと突き詰めるほうが合っているため、環境も集中しやすい静かなスペースが必要となるでしょう。
ちょっと人が敬遠するような特殊な分野にも冥王星は適応します。人が畏れるもの、見たくないもの、深い闇を扱うことができるのです。
その特異な才能が際立つほど、収入も応じて増えていきます。冥王星の別名は「富める者」ですから、自身のなかにある、まだ使っていない眠れる才能を掘り起こして活かしていくほどに、収入を増やしていくことができるでしょう。
蠍座が求めている愛し方/愛され方は次のようなものとなります。
執筆 占星術師・小泉マーリ