ホロスコープ上の土星はわたしたちの人生を安定させるための基盤やルールを【内在化】させることをうながします。
そのプロセスにおいて、自由な行動や表現は制限されていきますが、そうすることによって、はじめて、やりたいことが現実の形として表現されていくことになるでしょう。
土星は太陽系惑星の外郭にあり、それは城壁のように外からの侵入を守ると同時に、内部の働きを安定させるもの。
制限することによって、安定させること……無限に広がるものが「ここから、ここまで」と切り取られることによって、有限の時間と空間のなかで表現されることが可能となります。
わたしたちの内側には無限とも感じられるようなポテンシャルや夢や理想がありますが、それを実現するには「具体的にどのようにするのか」という現実的な型が必要となります。
好きな料理をいつでも自在に作るには、切る・煮る・焼くといった基本の調理法や食材の扱い方や知識が身についている必要があるように、いくら頭で「こういった料理が食べたい」と思い描いても、それがどんな素材でどのように作られているのかという型がなければ、再現することができません。
土星はわたしたちを繰り返し鍛錬することで、結果を導き出すための規律ある型を作ることを助けてくれます。
ひとたび型が内在化されると、その分野において、どんなものでも自在に、他の影響の介在なくして、得たい結果を作り出せるようになるでしょう。
わたしたちの内側にある「やる気」や「才能」や「可能性」を、現実のなかで使いこなすために、ひたすら繰り返し、鍛錬させるものが土星の力です。
この土星の働きなくして、わたしたちは自分自身のどんな才能や資質も深めることができないでしょう。
土星は約29.5年かけて太陽のまわりをめぐるため、およそ2.5~3年のあいだ、ひとつの星座に留まります。
その期間に誕生した全員が同じ星座に土星が入宮するため、土星の星座は世代の共通する特徴となって表れるでしょう。
土星の星座やハウスの配置は、人生のなかでもっとも強く型を作ることのできる分野……つまり、もっともエネルギーを集中させて物事を現実化する可能性のある分野を示しています。
それは効率的に具現化をうながすと同時に、配置によってはむずかしい問題を示唆することもあるでしょう。
土星が強く働きすぎる場合、外部から圧力のように制限がかかって自分自身を抑えこんでいるように感じる、ということが生じます。
壁によって守られて、安全に機能するはずのものが、壁の圧迫が強すぎて身動きがとれなくなる、といった内部制限となるケースです。
そうすると、流しこむ力が硬直しすぎて型にはめることができない、あるいは硬くなりすぎて型から抜くことができない、ということが起こり、自分の力が実現化されないまま、抑圧されて無意識下に入りこみます。
そして、無意識のうちにさまざまな精神的あるいは肉体的な問題を作り出しては「人生がうまくいかない」という機能不全に陥ることがあるでしょう。
それは自分自身を抑圧から解放して、力をしっかりと型として内在化させて、使えるようになるまで続くかもしれません。
わたしたちは自分のなかに使いこなしていない力がある限り「欲求不満」や「満たされない思い」を抱え続けることになります。
しかし、ひとたび自分のなかに、その分野における型を持つことができたなら、他がどうであれ動じないような、揺るぎのない立ち位置を手に入れることができます。
「何が起こっても大丈夫」という自信や、経験からくる説得力が高まりますが、そういった揺るぎなさを手に入れるためには、そのフィールドを制圧する=すべて把握している必要があります。
食材の知識、扱い方、調理法、技術や、そのキッチンのどこにどのようなものがあるのかといったことをすべて把握しているからこそ、プロはいつでも自在にどんな料理でも作り出せるのでしょう。
そして、ひとたび、揺るぎなさを手に入れると、気分や体調やその日の状況といったものに左右されることなく、いつ何時でも同じ結果を繰り返し、自在に作り出せるようになります。
土星はローマ神話のサートゥルヌス、ギリシア神話のクロノスの名を持ち、その惑星記号は彼の持つ鎌がシンボルとされています。
サートゥルヌスあるいはクロノスは時と農耕を司る神。
過去から現在を通過して未来へ向かう時間の流れを掌握しながら、確実に結果を実らせていく……そういったプロフェッショナルの姿が土星に象徴されているのでしょう。
そのことから父親との関係、すなわち社会的男性モデルが土星に投影されることもたびたびあるようです。
自分自身の土星の力を使いこなすことによって「わたしの人生は大丈夫」という、揺るぎのない安定感を、わたしたちは内側から持つことができるのでしょう。